店長が「板挟み」を力に変える方法|上司と部下の間で成果を出す考え方
上からは「数字を守れ」
下からは「人を大事にしてほしい」
どちらの言葉も正しいのに、間に立つ自分だけが苦しくなる──そんな経験はありませんか?
店長という立場は、上司と部下の狭間で常に“調整”を求められます。その責任感の強さゆえに、自分の気持ちを押し殺してしまう人も多いでしょう。
おはようございます、“飲食おじさん”です。外食チェーンで10年間勤務、うち7年を店長として店舗経営に取り組んできました。

本記事では、店長が感じる「板挟み」の正体を“構造”から紐解き、上下どちらにも引きずられずに、自分の軸を保つための考え方をお伝えします。
✅ この記事を読むメリット
- 板挟みの原因が“性格”ではなく“構造”だとわかる
- 上司と部下の間でブレない判断軸を持てる
- 苦しさを「成長の通過点」に変えるヒントが得られる
「自分だけがつらい」と感じたときこそ、この記事を読んで“立ち位置の意味”を見つめ直してみてください。
なぜ店長はいつも板挟みになるのか

店長という立場には、どれだけ経験を積んでも「板挟み」がつきまといます。
上司からは「もっと売上を上げてほしい」と言われ、部下からは「これ以上無理です」と訴えられる。
間に立つ自分だけが責められているような感覚になる――それが、店長の宿命ともいえる構造です。
板挟みは「性格」ではなく「構造」から生まれる
多くの人は、「自分の気の使い方が悪い」「伝え方が下手だから」と思いがちです。
しかし、板挟みは立場の構造そのものから生じます。
上司は「数字」や「方針」を重視し、部下は「人間関係」や「働きやすさ」を求める。この2つの“正しさ”がぶつかる地点こそ、店長のポジションなのです。
板挟みの本質は「信頼の間」に立つこと
実は、板挟みになる人ほど周囲から信頼されている証拠でもあります。
上司は「任せられる」と思うから指示を出し、部下は「話せる相手」と思うから本音をぶつけてくる。
つまり、板挟みとは「信頼と期待の間に立っている状態」なのです。
店長は「調整役」ではなく「通訳者」である
店長は、単に意見をまとめる「調整役」ではありません。
真の役割は、それぞれの“言葉”を理解し、翻訳することです。
上司の意図を「現場で動ける形」に翻訳し、部下の声を「上層に届くデータや提案」に変える。
この“翻訳”こそが、店長の存在価値です。
板挟みになるのは、上司と部下のどちらも大切にしているからです。どちらかを軽視すれば、楽にはなりますが信頼は得られません。その葛藤こそ、店長として信頼を任されている証拠です。

上司と部下、どちらも「正しい」ときの考え方

板挟みの中で最も迷うのは、上司も部下もどちらも正しいときです。上司は「数字を守れ」と言い、部下は「人を守りたい」と言う。
どちらも店のためを思っているからこそ、意見がぶつかります。そして、どちらかを優先すればもう片方からの不満が生まれる。
この状況で必要なのは、どちらの言葉にも一度距離を取ることです。感情で反応せず、言葉の“奥にある目的”を読み取る。
上司が求めているのは「店の成果」であり、部下が訴えているのは「お店の持続力」です。
一見対立して見えても、どちらも「店を良くしたい」という同じ方向を見ています。
判断は“店をどう動かすか”で考える
板挟みの場面では、「どちらの意見が正しいか」よりも「どうすれば店が前に進むか」を基準に考えた方が整理しやすいです。
- その判断で、現場は動けるか
- 続けられる仕組みになっているか
- 誰か一人の犠牲で成り立っていないか
この3点を意識するだけで、感情ではなく行動の目線で考えられます。
店長は、理想と現実をすり合わせる“実務の設計者”です。判断は、店で実際に動かせる内容にすることが大切です。
店長が板挟みのときに確認すべき3つの判断基準
| 判断ポイント | チェック内容 | 確認の視点 |
|---|---|---|
| 店として必要か | 指示や要望は店の方針と一致しているか | 店の目的との整合性 |
| 負担の偏りがないか | 誰か1人に無理がかかっていないか | 体制として無理がないか |
| 継続できる内容か | 今後も維持できる仕組みになっているか | 短期で終わらないか |
上司と部下の言葉を“通じる形”に変える
店長のもう一つの役割は、上司の意図と部下の現実をつなぐことです。
上司の言葉をそのまま伝えても動かないし、部下の不満をそのまま上に伝えても理解されません。
どちらにも“通じる形”に変える必要があります。
上司には、感情ではなく「事実」と「数字」で伝える
部下には、背景や目的をわかりやすく説明する
どちらにも“相手の立場で伝える努力”を忘れない
このすり合わせを丁寧に行うことで、店の空気は落ち着き、衝突は減ります。伝える力ではなく、伝わる形に直す力が店長の信頼をつくります。
上司も部下も、見ている景色が違うだけで、目指しているのは同じです。どちらの立場にも寄りすぎず、現実を動かす方法を探す。その積み重ねが、店を安定させる一番確かなやり方です。

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「間に立つ苦しさ」を力に変える思考法

上司と部下の間に立つ立場は、緊張が抜けません。
どちらかに寄ればもう一方の不満を買い、どちらにも寄らなければ孤立します。その状態が続くと、「自分は何の役にも立っていないのではないか」と感じてしまうことさえあります。
誰かの代わりに矢面に立つことはつらいですが、その立場でしか見えないものがあります。
ここで意識したいのは、気持ちに引きずられるのではなく、働きかけの形を変えることです。
✅ 主語を「自分」から「店」に変える
板挟みが苦しいときほど、自分の中に問題を抱えがちです。「自分の力不足だ」「自分が間に入らなければ」と抱え込むと、気力も判断力もすり減っていきます。
そこで一度、主語を「自分」から「店」に変えて考え直すことが有効です。
- 自分がどうしたいか → 店として何が必要か
- 自分が悪く思われないように → 店が崩れないように
- 自分が動けばなんとかなる → 全員が動ける形をつくる
店長が店の代弁者になれば、視点が変わり、迷いが減ります。
誰かの味方ではなく、「店としてどう考えるか」と伝えることで、判断が納得されやすくなります。
✅ 感情ではなく「根拠」で伝える
上司にも部下にも、感情のぶつけ合いではなく、根拠のある伝え方が必要です。
たとえば、部下の不満を上司に伝えるときも、ただの苦情にせず、実際に起きていること・数値・影響をセットで伝えることで受け止められ方が変わります。
「疲れているようです」ではなく
「今月は人員が1人少ない状態が続いています」
「やる気が下がっている気がします」ではなく
「今週、遅刻が3件出ています」
判断を自分の印象ではなく、店の状況に根拠を持たせて伝えることが、どちらの理解にもつながります。
これを繰り返すことで、間に立つ苦しさが、ただのストレスではなく「判断の力」に変わっていきます。
板挟みの中で一番つらいのは、自分を責め続けてしまうことです。誰かの顔色ではなく、店の状態をもとに話すようにすれば、気持ちも整理されます。その伝え方が、周りの信頼につながっていきます。

まとめ|板挟みの店長が判断に迷わなくなる考え方

店長が板挟みの苦しさに振り回されないために必要な視点
- 板挟みは「構造」であり、性格の問題ではない
- 上司と部下の両方の立場を“通じる形”でつなぐのが店長の仕事
- 判断は「店をどう動かすか」で決める
- 感情ではなく、事実と背景をもとに伝えることで信頼される
誰の味方になるかではなく、店を前に進めるには何が必要かを冷静に考えること。その視点があれば、板挟みの苦しさに飲み込まれなくなります。
「上司と部下、どちらの言い分も理解しようとするからこそ、間に立つことがつらくなります。ですが、それは責任を放棄せずに向き合っている証拠でもあります。」毎日“本当に”おつかれさまです。

👉 上司との認識のズレに悩んでいる方は、次の記事も参考にしてください。
