コスト管理

廃棄を減らすための仕込み量の決め方|数字と感覚のバランスが店を強くする

sawamurakazuya41@gmail.com
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「仕込みを少なくしてロスを減らせ」

──頭では分かっていても、現場ではそう単純にいきませんよね。

売り切れればお客様に迷惑をかけ、余れば廃棄が出る。昔の私も、毎朝“データとにらめっこ”しながら、その狭間で悩んでいました。

おはようございます、飲食おじさんです。外食チェーンで10年間勤務、うち7年を店長として店舗の運営に取り組んできました。

飲食おじさん
飲食おじさん

廃棄を減らすコツは、数字を信じることでも、感覚に頼ることでもなく、“数字と空気をつなぐ考え方”にあるということです。

✅ この記事を読むメリット

  • 仕込み量を“感覚”ではなく“再現できる基準”で決められる
  • 廃棄を「悪」ではなく「点検サイン」として扱える
  • “数字と現場”をつなぐ店長思考が身につく

「仕込み量に迷う時間」を減らしたい店長へ。
本記事を読み終えたころには、明日の仕込みが“少し楽になる考え方”が見つかるはずです。

ズレは数字の問題ではなく、判断の問題です

電卓を手に持ち、指を差している様子。飲食店のコスト管理や仕込み量の計算をイメージした写真。

数字は正しくても、使い方で結果が変わります

令和3年度の食品ロス量は約523万トンと推計されています。出典:環境省|食品ロスの発生量(令和3年度推計値)

仕込み量を決める際、多くの店舗が「昨日の販売数」や「平均実績」を基準にしています。

それ自体は正しい考え方です。しかし、問題は数字をどの視点で使うかという点にあります。

たとえば、昨日30食売れたから今日も30食仕込むという判断。一見合理的ですが、その30食が「なぜ売れたのか」を検証しなければ再現はできません。

偶然のヒット商品、天候、客層、スタッフの動き――条件が異なれば、同じ数字でも意味はまったく違ってきます。

数字を「答え」として扱うと、仕込みは一度きりの判断になります。

一方で、数字を「仮説の材料」として捉えれば、仕込みは再現性のある思考に変わります。数字は決断の“終わり”ではなく、“始まり”に使うものです。

判断を止めた瞬間に、仕込みはズレ始めます

ズレの原因は“分析ミス”ではなく、“思考の停止”にあります。

忙しいときほど「昨日と同じでいいか」と考えてしまいがちです。この瞬間に、現場の仕込み精度は確実に下がります。

判断とは、常に“今”の状況を整理する行為です。

「今日は誰が入っているのか」

「天気はどうか」

「客層の流れは変わっていないか」

一見単純な確認でも、これを毎日行うかどうかで、廃棄率は大きく変わります。

数字を扱い慣れた店ほど、この“現場の再確認”を軽視しがちです。しかし、数字は過去の積み重ねにすぎません。

今日の判断に使うのであれば、「今、何が違うのか」を常に意識する必要があります。正確さだけを追えば追うほど、現場の感覚は鈍っていきます。

数字は便利ですが、正解ではありません。数字を信じるというのは、考えることをやめないということです。

飲食おじさん
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仕込み判断のタイミングを見誤ると、廃棄は止まりません

「food loss」と書かれたメモと木製カトラリー。飲食店の食品ロスや廃棄問題をイメージした写真。

仕込みは「朝の1時間」で決まります

廃棄を減らす店ほど、朝の時間の使い方がうまいです。一日のリズムをつくるのは“朝の判断”です。「昨日の数字」を見るよりも、「今日の空気」を読むことが重要です。

朝に確認しておくべき3項目を明確にすると、仕込み判断の精度が上がります。

予約数と客層:予約状況、客層、団体有無をチェックする。

人員とスキル:誰が入っているか、仕込み能力と調理スピードを把握する。

天候と動線:天気・気温・イベント・交通量など、客足に関わる要因を確認する。

この3つを5分で整理できるだけで、当日の仕込み過多を防ぐことができます。

「安全マージン仕込み」がロスを生みます

多めに仕込むと、心理的には安心します。しかし、ロスの多くはその“安心の積み重ね”から生まれます。「万が一のため」のつもりが、実際には“慢性的な余剰”をつくっているのです。

もし不安を感じるなら、次の3点を意識してみてください。

  • 売り切れの損失より、廃棄の損失を可視化する
     → 売り切れは一時的、廃棄は累積的です。
  • 仕込みの「目的」を明確にする
     → 「足りなかったら困る」ではなく「必要な分を出し切る」へ意識を変える。
  • 一日の仕込み目標を“量”ではなく“精度”で評価する
     → 廃棄量ではなく、仕込み精度(誤差率)をチームで共有します。

数字の多い店ほど、“仕込みの安心”がコスト化していることに気づいていません。

週単位で見てこそ“タイミング”が見えます

日ごとに仕込み量を調整しても、効果は限定的です。仕込み判断の誤差は「日単位」ではなく、「週単位」で補正する方が正確です。

1週間ごとの流れをまとめて振り返ることで、「どの曜日にズレが起きやすいか」が見えるようになります。

月曜:在庫過多になりやすい(週初で読みが甘い)

金曜:仕込み不足が多発(油断と忙しさが重なる)

日曜:人員変動によるブレが発生しやすい

この“曜日別の誤差パターン”を可視化できると、感覚的な判断を数字で裏づけることができ、精度が格段に上がります。

焦って仕込むと、数字は乱れます。落ち着いて“流れ”を読む店ほど、ロスは減っていきます。

飲食おじさん
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👉 仕込み判断の精度を上げたい方は、次の記事「飲食店の食材ロスが止まらない理由」も参考にしてください。

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飲食店の食材ロスが止まらない理由|やっていない改善策とは?
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仕込み量を決める3つの基準

まな板の上に並んだ野菜と包丁。飲食店の仕込みや食材管理をイメージした写真。

① 数字を“道具”として使う

数字は判断を助ける道具であって、答えではありません。過去データをそのまま当てはめるのではなく、基準線として扱うことが重要です。

たとえば、前年同日の売上が30万円だった場合でも、

  • 天候
  • 客層の変化
  • メニュー構成

などの条件が違えば、数字の意味も変わります。

数字を使う際は、次の3点を意識します。

比較対象をそろえる(曜日・天気・イベントを揃える)

例外を除外する(特異日やキャンペーン日は分けて扱う)

「平均」より「傾向」で読む」(流れを重視する)

この3つを守るだけで、数字が“予想”ではなく“判断の基盤”として使えるようになります。

② 兆しを拾う観察力を鍛える

仕込み判断において、兆しを見抜く力は経験よりも重要です。数字に現れる前の“空気の変化”を感じ取れるかどうかで、ロス率は大きく変わります。

観察するポイントは次の通りです。

  • 予約や問い合わせの増減
  • SNSでの話題・口コミの反応
  • 仕入れ先の動き(価格変動や入荷量)
  • 店内の雰囲気(スタッフやお客様のテンション)

これらを毎日メモしておくと、数字では見えない“前兆”を掴めるようになります。

それが、経験を超えた「予測力」を育てます。

✅ ③ 当日の“余力”を読む

仕込みの判断は、材料だけでなくその日の人員状況によっても変わります。

人手が足りない日に多く仕込んでも、作業が追いつかず廃棄が出てしまいます。逆に、十分な人員が確保できている日は、多少多めに仕込んでも対応できます。

判断のポイント

今日の人員で仕込みが回るかを確認する

ピーク前に仕込みが終わる時間配分を意識する

仕込み量を増やす日は、担当と責任者を明確にする

人の動きを“リソース”として捉えると、無理のない範囲で仕込み量を調整できます。判断の根拠が明確になり、仕込みの再現性も高まります。

仕込み判断に使う3つの基準

判断基準主なチェック内容ポイント
数字過去データ・売上・天候・曜日数字は“基準線”として使う
兆し予約・SNS・客層の変化変化の前触れを捉える
当日の人員・作業量・時間配分無理のない仕込み量を設定

数字で見て、兆しで感じて、人で動かす。仕込みの精度は“理屈と空気の両立”で決まります。

飲食おじさん
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まとめ|廃棄を減らすための仕込み量と適正在庫の考え方

「まとめ」と書かれたボードを指差している写真。記事の要点や結論を示すイメージ。

廃棄を減らす3つの判断基準と仕込み精度を上げる方法

  • 仕込み判断は「数字・兆し・人」の3つの視点で行う
  • 廃棄は“悪”ではなく、判断を見直すサインと捉える
  • 精度の高い仕込みは、日々の仮説と検証の積み重ねで実現する

過去データを読み、兆しを感じ取り、当日の余力を見極める。その積み重ねが、ロスを最小限に抑えた「再現性のある仕込み」を生み出します。

仕込みを減らすより、判断の精度を上げることです。数字を使いこなせば、廃棄は自然と減っていきます。」毎日“本当に”おつかれさまです。

飲食おじさん
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飲食おじさん
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外食チェーン出身ブロガー
飲食店の採用・教育・接客・売上管理を、仕組みで改善するノウハウを発信。外食チェーンの現場で培った経験をもとに、店長・スタッフの悩みを解決します。愛読書:ドラッカー全般(時代を超えて揺るがない普遍の経営哲学が大好きです!)
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